稲正樹・国際基督教大学教授のリレートークでのお話

憲法学者有志が7月3日午後3時から6時まで「安保関連法案に反対する憲法学者リレートーク」を国会前で行うことについては、すでにお知らせしました。

7月3日 憲法学者も国会へ!

 

この国会前「安保関連法案に反対する憲法学者リレートーク」での憲法研究者のお話については、すでにお二人のものをご紹介しました。

最初にご紹介したのは活水女子大学の渡邊弘・准教授のお話で、二人目は埼玉大学の三輪隆・名誉教授のお話でした(これは当日のトーク順ではありません)。

渡邊弘・活水女子大学准教授の国会前リレートークでのお話

人殺し法案を止めよう!(三輪隆@7.3 リレートーク)

 

以下では、国際基督教大学の稲正樹・客員教授(憲法学)のお話を紹介します。

 

みなさんこんにちは。雨の中集まってくださって、ご苦労様です。

国際基督教大学で憲法を担当している稲正樹と申します。

私は、まず最初に、今回の実態は戦争法制そのものを「平和安全法制」と呼んでいること自体を問題にしたいと思います。これはかのジョージ・オーウェルの1984年のいう「戦争は平和である」というニュースピークスが、2015年の日本における出現したことに他なりません。憲法の規範性を極限にまで切り詰め、自衛隊を世界大に展開させて、日本を戦争する国家に変貌させる今回の諸法案を「平和安全法制」と呼ぶことは、真実を虚偽の言葉で隠蔽し、主権者である国民を愚弄する行為です。戦争法と呼ぶべきだという福島瑞穂議員の発言を議事録から削除しようとした試みがありました。この試みは、かの斉藤隆夫の反軍演説の故事を思い出させます。国会答弁においてレッテル貼りを止めるべきだという安倍発言は、事態の真実をついた「戦争法案」を撤回・廃案にせよという国民世論に動揺しているあらわれです。

 

第二に、10本の軍事法を一括して改正する法案を「平和安全整備法案」となづけ、海外派兵恒久法である「国際平和支援法案」と合わせて計11の法案を、内閣官房、外務省、防衛省の一部の官僚と自民・公明の一部の議員たちのみで立案・決定し、5月14日の閣議決定、国会上程後、国民の反対世論の昂揚を見るや、6月24日までの会期を何と9月27日まで95日間延長したことです。ここには、政府法案の内容を決定前にできる限り広く公開して国民的世論を喚起し、多くの専門家や国民から憲法違反の疑いがかけられている戦争法制を徹底的に国会で議論し、国民に理解を求め、必要があれば修正をするという姿勢の片りんも見られません。憲法59条4項で「参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて60日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる」、2項「衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決をした法律案は、衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で再び可決したときは、法律となる」という、60日ルールを念頭に置いた戦後最長の会期延長です。「(過去)最大の延長幅をとって、徹底的に議論し、最終的に決めるときには決める議会制民主主義の王道を進んでいく」という首相発言にもかかわらず、7月15日を軸に衆議院特別委員会で採決の方針を自公で確認したという7月1日の報道に接して、唖然としています。国会の会期を自由自在に延長し、議会での真摯な議論を軽視して、とにかく採決、可決へと一直線に狙いを定めているだけです。衆議院の特別委員会において議論の深まりはまったく見られません。

 

さらに、4月27日に改定された日米新ガイドラインを実行するための根拠法となるのが11法案であり、ガイドラインは「戦争マニュアル」そのものです。4月29日のアメリカ上院下院議員の前での首相演説によって「この夏までの成立を約束」したのは、国民よりも対米公約を大切にして、国民代表機関をないがしろにしたものです。

 

第三に、今回の戦争法制は、これまでの政府解釈で認められないとしてきた集団的自衛権の行使を安保情勢の変化等を理由にして行うことができるとした昨年7月1日の閣議決定を根拠にしています。しかしながら、立憲主義とは権力担当者が憲法の拘束の範囲内でしか行動できないという意味をもっており、内閣に課せられた拘束を自ら解き放った昨年7月1日の閣議決定は立憲主義に反する暴挙です。憲法9条の規範内容を根本的に変更させた内閣による憲法解釈の変更は、憲法96条に基づく国民の憲法改正権の発動なしに、国民の憲法改正権を簒奪する違憲の行為です。具体的事件の解決に必要な限りでしか憲法判断を行わないという違憲審査制を前提にした日本の国制構造をもとにして考えてみると、昨年の閣議決定は、戦争法制の国会審議という現在の国会のブラックホール化を生み出した元凶にほかなりません。具体的な法案審議に入る前に、国会はまずこの論点を徹底的に論議すべきです。

 

第四に、戦争法制の問題点を若干述べて終わりにします。事態対処法の改正は、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」を「存立危機事態」と称し、「武力攻撃事態等」と並んで自衛隊の防衛出動を可能にしています。「存立危機事態」認定判断の客観性・合理性の欠如のなかで、ホルムズ海峡における機雷敷設が発動例として挙げられているのは、「経済利権のための戦争」を彷彿とさせます。歯止めのない集団的自衛権の行使を規定しているのは違憲の法案です。

また、周辺事態法の抜本改正の重要影響事態法、海外派兵恒久法の一般法である国際平和支援法、PKO法の抜本改正の国際平和協力法という名称の3つの法案は、いずれも自衛隊の海外派兵の拡大を狙っているものです。重要影響事態法、国際平和支援法は、「後方地域」の制限を撤廃し、「現に戦闘が行われている現場」(戦闘現場)以外の場所であれば自衛隊の米軍等に対する兵站活動を規定し、さらに国際平和協力法では「国際連携平和安全活動」の追加によって、国連が統括しない多国籍軍での活動を規定しています。

地球的規模で行われる米軍等に対する戦争協力を行い、新たなPKO法によって安全確保活動や駆けつけ警護を行い、米軍部隊等の防護のための武器の使用や在外邦人の奪還等を行う自衛隊を実現させようという戦争法制は、戦争に次ぐ戦争の歴史から憲法9条と平和的生存権のもとにある日本という国の形へと発展しつつあった70年の歴史を再び転換し、グローバル軍事大国への道をたどる亡国の道です。

 

さる1月に急逝した9条の会の呼びかけ人であった憲法研究者の奥平康弘先生は、「平和主義を勝ち抜こう」という言葉を遺されました。最後に奥平先生の言葉をぜひ紹介させてください。

<戦後日本ではこれまで、平和主義は、自由人権主義および民主主義とともに、憲法における3本の柱のひとつにおかれてきた。非武装で、海外に派兵せず、武器は使用させないといった建前のゆえに、日本では平和憲法あるいは平和主義憲法という呼び名が自然にそして広く行き渡っている。

かかるものとしての平和主義は人々の間に通用して人気があるから、社会支配層はなんとか人気を保持しようと意図して「積極的」という人をまどわす形容詞をつけているのである。我々はこの程度の仕業で騙されはしない、ということを世界の人々に行動をもって示そうではないか。そうすることによって日本国憲法が、現代の混迷に満ちたアジア・世界のありようにある種独特な役割を果たしうることを検証しようではないか。>(奥平康弘「はじめに―平和主義を勝ち抜こう」奥平康弘・山口二郎(編)『集団的自衛権の何が問題か―解釈改憲批判』岩波書店、2014年、ⅸ-ⅹ頁。)

 

以上が奥平先生の遺された言葉です。

戦後70年の節目を迎えた今日、戦争法案を廃案にする戦いは、平和主義のプロジェクトを世代から世代へと未来に繋いでいく戦いでもあります。日本と北東アジア諸国との和解と平和をもたらすためにも、戦争法案を廃案にする戦いを全力で戦い抜きましょう。有難うございました。

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