小澤隆一・東京慈恵会医科大学教授「戦争法案は廃案に  廃案へ追い込む展望は」

小澤隆一・東京慈恵会医科大学教授のインタビュー記事「戦争法案は廃案に 廃案へ追い込む展望は」が「全国商工新聞」(2015年8月3日)に掲載されました。

以下、この記事を紹介いたします。

 

戦争法案は廃案に

廃案へ追い込む展望は

 戦争法案阻止のたたかいの舞台は参議院に移りました。衆議院での審議を通じて何が明らかとなったのか。廃案へと追い込む展望はどこにあるのか。衆院特別委員会の中央公聴会(7月13日)に野党側の公述人として出席し、廃案を求めた東京慈恵会医科大学の小澤隆一教授(憲法学)に聞きました。

 

東京慈恵会医科大学教授・小澤隆一さんに聞く

違憲法案の再議決許さない
商売しながら世論広げよう

違憲性揺るぎなく

今回の強行採決は、政権与党が追い詰められた余裕のなさの表れと見ています。強行採決に抗議する6万とか10万の人々が連日国会を包囲し、内閣支持率も50%台から40%台、30%台へと短期間で約10%ずつ下落しました。自民党の高村正彦副総裁は「支持率を犠牲にしてでも、国民のために必要なことはやってきたのがわが党の誇るべき歴史」と言いますが、内閣支持率が危険水域の20%台に落ちたら、そんな大口をたたいていられないだろうし、そうした状況を生み出す必要があると思います。
衆院での審議を通じ、私は大きく二つのことが明らかになったと考えます。一つは、今回の法案の違憲性が揺るぎない事実だということです。
例えば、政府与党が合憲の根拠に持ち出す砂川事件の最高裁判決ですが、この裁判は安保条約と駐留米軍が憲法9条に反するかどうかが争われた事案です。裁判所は争われた事案の結論を出す場所なので、争われていない問題について最高裁がいくら判決理由を書いても、先例として扱うに値しないものです。しかも、集団的自衛権は合憲だとキッパリ述べているわけでもない。その辺に転がっている石ころをダイヤモンドだと大騒ぎしているようなものです。それを弁護士資格を持ち、憲法も砂川事件もよく分かっているはずの高村副総裁や北側一雄・公明党副代表が片棒を担いでいるので、私たち憲法学者は専門家として「それは間違いですよ」と言う使命がある。だから、皆さん声を上げているのだと思います。衆院憲法審査会で自民党推薦の参考人として今回の法案が違憲だと指摘した早稲田大学大学院の長谷部恭男教授に言わせれば「もう決着がついた」話なんです。

 

自衛隊にしわ寄せ

二つ目は、私が公聴会で述べたことですが、憲法解釈の変更だけで済ませようとして、つじつまの合わないことが生じ、その一番のしわ寄せを食らうのが自衛隊員だということです。本来なら憲法を変えなければ海外派兵などできないのです。しかし、改憲発議の要件を各議院の3分の2から過半数に低めようとした96条の明文改憲を行おうとして失敗した焦りから、解釈改憲で今回の法案を作った結果、自衛隊員にとんでもなく酷な要求をする結果になった。

例えば、重要事態影響法案と国際平和支援法案では、自衛隊員は「後方支援」という形で出て行きます。いずれも“他国の武力行使とは一体化しない”原則です。もし一体化してしまうと、憲法9条1項に違反するからなのですが、ところがその結果、もし後方支援の最中に―実は後方支援というのは自衛隊が米軍のすぐ近くで武器や弾薬の補給を一体となって行う兵站活動です―自衛隊員が米軍と一緒になって戦闘に巻き込まれ、相手に捕まった場合、米兵は正規の戦闘員ですから捕虜になれます。でも、自衛隊員は捕虜にしてもらえないのです。日本政府は、自衛隊員はジュネーブ条約で定められた捕虜には当たらないという立場です。「自衛隊員は戦闘員ではない。だから、捕まえられているのは不当だ。早く釈放しろ」と要求するのだそうですが、自衛隊員は米兵と一緒にいて武器も持っている。民間人としては、およそ説明のつかない活動をやっているわけで、民間人としての保護も受けられない。もし相手から「こいつは戦闘に勝手に参加しているテロリストだ」と言われたら、「違います」とは言えない立場になってしまう。こんなおかしなことが、派兵された自衛隊員の命と権利を軽視する形でしわ寄せされる―。
こういう話を公聴会でしたら、自民党席の方から「だから軍隊にすればいいんだ」とボソッとつぶやいたのが私の耳には聞こえました。自民党の特別委員たちは、憲法改正をしないまま自衛隊を送り出そうとするから、こんなつじつまが合わないことが起きていると分かっている。それを百も承知で、こんなとんでもない法案を強行採決で通したのです。政治家として決して許されない、責任放棄の行為だと思います。

 

業者が店で運動を

 参議院でも与党が多数なので、国会内の力関係だけでは、いずれどこかで採決されるでしょう。
参議院で採決されなくても「60日ルール」を使って、今国会中に衆議院の3分の2以上で再議決すれば法案は成立します。戦争法案を廃案に追い込むにはこの両方のシナリオを消すことです。参議院で採決できず、衆議院でも再議決できない状況をつくり出せばいいのです。
そのためには、参議院では徹底審議で戦争法案の違憲性や問題点を国民の目の前でさらに明らかにしていく。そして、衆院議員にも再議決を強行したら自分たちの身が危ないと思わせるぐらいの国会の外での圧倒的世論をつくることです。
その点で、業者の皆さんの役割は非常に大きいと思います。お店などの商売をしているということは、常に人の目に触れて仕事をし、人ともしょっちゅう会話している。そういう皆さんが「戦争法案反対」「安倍政治を許さない」との主張を掲げ商売をされるのは、勇気がいるとは思いますが、そこから会話が弾んで「実は、私も反対なんだ」となっていけば、「じゃあ、もう一つ買いましょうか」「まけとくよ」などとなって、戦争法案を廃案に追い込むエール交換の時間が生まれるのではないか。それができるのは、今の日本社会では一国一城の主で仕事をされている業者の皆さんだと思います。
60年安保の時、業者は「閉店スト」で店を閉めてデモに参加しましたが、今の時代は商売をしながら会話をした方がいい。
60年安保当時と比べて、民主主義は着実に成熟していると感じます。戦後教育の蓄積の中で憲法の重要性や民主主義、人権、平和主義の大切さが語られてきたことが、いま国民が声を上げる土台になっている。日常生活で憲法を意識することはほとんどないと思いますが、いざ戦争法案の問題が起こってみると、「どうでもいいや」ではなく、「憲法違反の法律はダメでしょう」「政治家が憲法を勝手に変えるな」と判断する力を国民は持っている。ぜひ業者の皆さんには商売を行いながら、戦争法案を廃案に追い込む世論を広げていってほしいと思います。

 

▽プロフィル

おざわ・りゅういち 1959年生まれ。90年静岡大学助教授、2000年同教授を経て06年から現職。著書に『安倍改憲と自治体』(自治体問題研究所)、『集団的自衛権容認を批判する』(日本評論社)など多数。4日間で178人(7月20日時点)が賛同した「安保関連法案の強行採決に抗議するとともに、そのすみやかな廃案を求める憲法研究者の声明」事務局

「全国商工新聞」(2015年8月3日)第5面掲載

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