森英樹・名古屋大学名誉教授「安保関連法総批判―戦争法としての『平和安全』法制の分析 序論」

こんにちは。

本日は、森英樹編『安保関連法総批判』(別冊法学セミナー)に収録されている、森英樹・名古屋大学名誉教授の「安保関連法総批判―戦争法としての『平和安全』法制の分析 序論」をご紹介します。

「安保関連法総批判―戦争法としての「平和安全」法制の分析 序論」『安保関連法総批判』2015年8月(日本評論社)1-10頁。

本書の位置づけですが、すでに公刊されている別冊法学セミナー『集団的自衛権容認を批判する』2014年8月(日本評論社)、『集団的自衛権行使容認とその先にあるもの』2015年4月(日本評論社)、とりわけ後者に連なる「緊急続編」とされています。

そして、本書の一番最初に収められている森教授の論文は、総論および各論の検討に入る前段階の「序論」とされています。内容は、法案をめぐるこれまでの経緯を追い、各論稿に共通する論点について、論じられたものです。

まず、森教授は、7・1閣議決定の具体化をはかる与党協議について、協議時間の短さと首相の意向をくんだ関係職員が主導的役割を果していることに触れます。このことに加え、第12回の協議(4月27日)で、新「日米防衛協力のための指針」が合意されたことにも着目します。
そして、今回の法案は、「日米安保法制を主要な駆動因」としていること、さらに、安保法制の変容は、条約の改定ではなく、指針の合意という「法的には極めて薄弱な根拠」でなされていることを、森教授は指摘しています。

つづけて、この4月27日の新指針の合意を受けておこなわれた、安倍首相による4月29日の米議会での演説には、3つの看過できない内容があることが、指摘されています。
1つ目は「米国史全体の4分の1以上に及ぶ日米同盟」という言い回しについてです。森教授は、60年安保改定を経ても「同盟」と命名することは意識的に避けられていたこと、「同盟」という表現を初めて使ったのは1979年の大平首相であること、今日型の「同盟」は1996年の橋本首相による「日米安保共同宣言」への署名が起点であることなどから、1952年からの「同盟」という言い回しは、虚偽であると批判しています。
2つ目は「日本[で我々]はいま、安保法制の充実[強化]に取り組んでいます。……この夏までに成就させます。」というくだりについてです。これに対しては、「国会無視、ひいては主権者国民無視」であると批判しています。
最後、3つ目は、日本とアメリカを「自由世界第1、第2の民主主義大国」と呼んでいることです。日本とアメリカで世界を仕切ろうとする構えは、「bigemony(共同覇権)を日米の手で夢想しているフシさえ感じさせる」と、評しています。そして、この点については、アメリカは日本をジュニア・パートナー程度にしか見ていないにもかかわらず、日本はアメリカと並ぶbigemonyの大国と考えていることに、「日米の思惑には微妙以上のずれ」があると指摘しています。

さらに、一連の動向において、沖縄への配慮が欠けていることにも、森教授は言及します。
先の大戦で悲惨な被害を受けた沖縄県民が、9条のある日本に復帰した5月15日に、法案を国会に提出したこと。「日本が沖縄を見捨てた」、沖縄にとっては屈辱的な日である4月28日に、オール沖縄が反対している辺野古基地建設について、安倍首相とオバマ大統領が笑顔で再確認したこと。沖縄が敗戦を強いられた6月23日の節目に、安倍首相は通り一遍の「哀悼の誠」を述べ、知事との会談も簡単に済まして、東京に引き上げたこと。
これら一連の沖縄への配慮を欠いた動向に対して、沖縄県民の思いや怒りへ寄り添うように文章が書かれています。

以上の経緯を踏まえて、森教授は、2つの対立軸を確認します。
1つは、「この法案をめぐる政治的磁場は「平安」法案VS「戦争」法案という両極によって形成され、国会議論も社会的争論も激しい対立状況が続いている」という文章に示されているように、「平安」法案VS「戦争」法案という、法案の評価をめぐる対立軸です。
もう1つは、法案推進VS憲法学という対立軸です。「憲法学にとっては、文字どおり法外な挑戦を受けている」現在にあって、「改めて冷静に憲法前文と特に9条を読むべき」ことが、提言されています。

そして、「憲法学がいま知的道徳的ヘゲモニー(グラムシ)を発揮して法案に対峙しつつ、法案を退治することは、憲法学の歴史的責任でさえあろう。」として、森教授は論文を締めくくります。

森教授の、この「序論」を受けて、本書では総論および各論が展開されています。
個別の論文については、別の機会に紹介させていただく予定です。

新別冊法セミ・表紙

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