纐纈厚・山口大学教授の特別メッセージ「自衛隊統合幕僚監部作成『内部文書』を批判する」

統合幕僚監部の内部文書については、この共同ブログで、その全文を公表しました。

自衛隊統合幕僚監部「今後の進め方」(内部文書)全文

 

憲法研究者の有志は、この統合幕僚監部の内部文書に関して国会の厳正なる対応を求める緊急声明を発しました。

統合幕僚監部内部文書に関わり国会の厳正なる対応を求める緊急声明

 

その際、寄せいられたメッセージについても、そこで全て紹介していますが、纐纈厚・山口大学教授の特別メッセージ「自衛隊統合幕僚監部作成『内部文書』を批判する」については、論説に相当いたしますので、改めて以下で紹介いたします。

 

■ 特別メッセージ

自衛隊統合幕僚監部作成「内部文書」を批判する

纐纈厚(山口大学教授)

 今回明らかにされた「内部文書」には、極めて重要なポイントが含まれているが、なかでも安保関連法案の制定を先取りして、事実上の戦争指導機構を自衛隊内に設置する計画が、あらためて明らかになったことである。先ずは、その点に絞り指摘しておきたい。

それは、「ガイドライン及び平和安全法制に基づく主要検討事項」(41頁)の「Ⅲ 強化された同盟内の調整」の箇所である。取りあえず、問題点を二点だけ指摘しておきたい。

第一に「A 同盟調整メカニズム」とは、これまでのガイドライン(1997年9月23日)に示されていた「調整メカニズム」(BCM)から、平時から「同盟調整メカニズム」(ACM)に変更されるとするのは、その名が示す通り、“日米共同戦争指導機構“の設置を意味する。換言すれば、”米日連合司令部“と言い換えても良い。つまり、自衛隊と米軍との共同作戦構想を調整・検討する役割から、自衛隊と米軍が文字通り一体となって作戦行動に従事するための戦闘指揮所となるのである。

そのことを具体的に示すために、「運用面の調整を実施する軍軍間の調整所(ACM内に設置)の運用要領を検討」すると明記された(強調引用者)。自衛隊統合幕僚監部で自衛隊は、既に間違いなく「軍」と自己規定しているのである。ここで言う「同盟調整メカニズム」とは、既に事実上既に存在しており、それを従来の戦時対応型から平時対応型へと転換を図った点において、頗る重大な意味を持つ。つまり、このメカニズムが機能することは、常に自衛隊と米軍が戦時対応の段階に入ることを意味しているからである。

第二に「C 共同計画の策定」の項において明記された「共同計画策定メカニズム」(BPM)の設置である。1997年の「日米防衛協力ための指針」(ガイドライン)では、「平素から行う協力」のなかで「3 日米共同の取り組み」として「包括的メカニズム」及び「調整メカニズム」と称する二つのメカニズム(機構)の設置が図られた。ガイドラインの制定に先立ち、「日米共同声明」(1997年9月)では、ガイドラインを実行する上で「決定的に重要」と位置付けられた機構だ。以後、「包括的メカニズム」はガイドラインを実行する中核組織として、翌年の1998年1月20日に発足している。日本政府は以後、この「包括的メカニズム」の下でガイドラインの実行作業に入り、有事関連法案の検討作業を進めた結果として「周辺事態法案」の国会上程に漕ぎ着けた。これを皮切りに、当該期の一連の有事法制の策定が相次ぎ実行されたのである。

そして、今回の「内部文書」では、「今までの「包括的メカニズム」という枠組みでの「計画的検討」から、「「共同計画策定メカニズム」という枠組みになり、統幕が主管となって「計画策定」を行うことになります。」と明記している。これまでの「包括的メカニズム」は、日米安全保障協議委員会(SCC)、防衛協力小委員会(SDC)、共同計画検討委員会」(BPC)から構成され、「日本有事」に向けた「共同作戦計画」や「日本周辺有事」の「相互協力計画」(事実上の「共同作戦計画」)を策定していたが、ポイントは「統幕が主管」とって作戦計画を主導する役割を担おうとしていることである。つまり、従来は米軍が主管となって作戦計画を主導していたのが、自衛隊が前面に出る方向性が明記されていることである。米軍追従型の自衛隊から日米共同型への転換を示唆している。

こうした問題の背景にあるのは、言う間でもなく集団的自衛権行使問題との関連である。集団的自衛権は、詰めて言えば米軍への支援の一環として米軍の代わりに自衛隊が戦闘を担うことを射程に据えたものである。そうした自衛隊の動きを担保するものとして、「同盟調整メカニズム」を十全に機能させることが求められている。日米安保関連法案を先取りした内容の「内部文書」では、自衛隊は既に戦闘モードに入っているのである。

以上の指摘を踏まえて厳しく批判すべきは、第一に「改訂ガイドライン」(2015年4月27日)を実質化する安保関連法案に含まれていない内容が「内部文書」に明記され、安保関連法案が成立すると直ちに、例えば指摘したような「米日連合司令部」が自動的に設置される仕掛けが用意されていることである。国会を蔑ろにし、民主主義の基本原則を全否定するものである。同時に主権者である国民に秘匿しつつ、平時から臨戦態勢を敷くためのシステムが構築されようとしていることは、平和憲法を破壊し、国民をして常に戦争の危機に晒そうとするものである。暴挙と言わざるを得ない。

第二は自衛隊制服組の独走が本格化していることである。先に防衛省設置法第12条が改正され、日本型文民統制としての文官統制の形骸化が一段と進められた経緯がある。文官と武官との対等性が担保されたのである。そうした制度変更により、自衛隊制服組の権限が一層強化され、自衛隊軍事機構の肥大化が始まっているのである。戦争指導機構の設置により民主主義が機能不全の状態の追い込まれる中で、集団的自衛権行使が具体化する段階にあって、今一度文民統制の原則の徹底化が不可欠であろう。

このように内部文書のポイントの一つを取り上げただけでも、安保関連法案がどれだけ危険に満ちたものであるか理解できるのではないか。私たちは、そのような強面な国家や市民社会を築くために奮闘してきたのではない。平和憲法の原点に立ち返り、軍事に依存しない国家、平和市民によって築かれる市民社会の実現こそ私たち真の平和を望む者の立場ではないか。

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