本 秀紀・名古屋大学教授「9・19 ここから始まる民主主義」

本 秀紀・名古屋大学教授が、秘密保全法に反対する愛知の会の機関紙『極秘通信』17号に「9・19 ここから始まる民主主義」を寄稿しました。編集部から許可を得て、以下に転載します。

 

9・19 ここから始まる民主主義

名古屋大学教授 本 秀紀

 

9月19日未明、参議院で戦争法が強行採決された。国会前で十数万の市民が抗議の声を上げ、全国的にも津々浦々で広範な反対運動が展開されたにもかかわらず、政府与党はこれを踏みにじった。安倍首相の言う「民主主義」とは、選挙で多数を得た勢力が数の力で物事を決めていくという「多数決民主主義」である。しかしそもそも、小選挙区制中心の選挙制度により、民意は国会の構成に反映していないのだから(昨年の総選挙で自民党は、有権者の17%の得票で6割以上の議席を得た)、国会内の多数派と民意とが乖離するのは当たり前。集会・デモ・街頭宣伝などで発せられる国民の声に、国民代表機関たる国会が敏感に反応して初めて、政治は民主主義と呼ぶにふさわしいものとなる。

戦争法反対の過程で繰り広げられた「路上の民主主義」は、これまでにない特徴をもつ。なんといっても、国会前でも全国でも、集まる人の数や顔ぶれの新しさはハンパないが、その大きな原動力となったのは、SEALDsをはじめとする若者たちの運動だろう。彼らの国会前行動や各地での街宣が、インターネットを通じて多くの市民に届けられ、従来から平和運動や市民運動に携わってきた人びとを勇気づけるとともに、これまで政治に関心をもたなかった幅広い層の心を動かした。彼らは、誰かに言われて声を上げているのではない。安倍政治が続いたら「当たり前の生活」ができなくなるかもしれないから、やむにやまれず街頭に出る。戦争法が成立したら日本が人殺しをする国になる、そんなことに荷担したくないから、その想いを人に伝える。言葉をとことん軽んじる安倍政権とは反対に、よく練られた自分の言葉で語られる彼らのスピーチは、世代を越えて聞く者の心に響き、スタイリッシュな表現方法ともあいまって、無数の人びとを惹きつけた。彼らが触媒となり、緩やかで多様なネットワークが全国に広がった。

〈国会前〉に象徴されるような、市民が集って声を上げる「場」が生み出され、民意の高まりが可視化されたことも大きい。全国各地で新しい表現空間がそこかしこに創り出され、自発的な創意工夫により新たな表現スタイルが編み出された。全国的な反対運動のうねりとその可視化によって、大手メディアもこれを取り上げざるをなくなり、国会外の国民的運動が国会内の野党の連携と抵抗を後押しして、与党をギリギリのところまで追い込んだ。国民が自ら声を上げ、その力で政治を動かしていくという民主主義の出発点に私たちは立ったのだ。

戦争法や秘密法の発動を許さず、さらには廃止に追い込むために、芽生えつつある民主主義の文化を育てていこう。「路上の民主主義」を定着させ、普通の市民が街頭で政治について意見を述べることが当たり前の社会を創り出すことができれば、立憲主義を取り戻し、本当の平和主義を実現する道が拓かれるにちがいない。

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